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ABAS: Annals of Business Administrative Science について

ABAS (「アバス」と呼んでいます)は、日本国内の経営研究の成果を海外の研究者向けに発信する無料(open-access)の英文オンライン・ジャーナルです。もちろんレフェリー誌です。国際的に認知されたオープン・アクセス誌のオンライン・ディレクトリ・サービスである DOAJ (Directory of Open Access Journals)に収載され(日本で41誌目)、世界的な学術誌データベースであるEBSCOhostとProQuestにも収録されて、いずれでも全文ダウンロード可能になっていますが、どれも日本の経営学系のジャーナルとしては初めてのことです。 創刊は2002年で、東京大学大学院経済学研究科経営専攻の教員有志が中心となって設立した NPO法人グローバルビジネスリサーチセンター (Global Business Research Center: GBRC) が発行しています。

ABASは創刊10周年を一区切りとし、Volume 11からは新生ABASとして再スタートしました。社会科学系の従来の海外・国内ジャーナルとは一線を画し、まったく異なる新しい「ABASスタイル」の個性的でスタイリッシュな論文を掲載し、「引用されるジャーナル」を目指す。これがABASの編集方針です。

ABASスタイルとは

  1. 1論文は、一つの学説、一つのデータセット、一つのコンセプトに焦点を当て、論旨がシンプルかつ明快です。
  2. 論文タイトルと要約は、それを読むだけで、論文の論旨、主張を理解できるように解説的です。
  3. 1論文は、一気に読み切れる長さ10〜15ページ程度を目安にしてコンパクトにまとめられています。
  4. 世界共通語として英語を使う以上、nonnative “reader” of English を想定した平易な英文です。
  5. 高度な数学・統計手法は使いません。
ABASが特に重視しているのは、従来のジャーナルが軽視してきた、しかし読者は読みたいと思っている次の三つのジャンルです。
《テクニカル・ノート》 既存研究の間違いや問題点を明らかにしたもの
《事実発見型調査報告》 調査データから得られた面白い事実発見を明記したもの
《コンセプチュアル・ペーパー》 自他問わず面白い概念モデルを紹介・解説したもの

ABASは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の電子ジャーナル・サイトJ-STAGEの早期公開機能を導入しています。J-STAGEの「早期公開」(Advance Publication)は、巻・号・ページ等の書誌情報が未確定の論文を公開できる機能です。早期公開版も本公開版も同じDOIが付与され、同一の論文として扱われ、Google Scholarにもデータが提供されます。早期公開は論文採択後できるだけ速やかに行われますので、早期公開版の公開は不定期になります。早期公開された論文は2ヶ月に1号のペースでまとめて、巻・号・ページ等を確定してからJ-STAGEで本公開するとともに、学術論文を中心とした学術情報を検索して利用できる世界的なオンライン・データベースEBSCOhost (有料)、ProQuest (有料)、DOAJ (無料)にも逐次収録されて、全文ダウンロードが可能となります。また、オープン・サイエンスの潮流を受けて2021年から運用が始まったJ-STAGE Dataでも、論文に紐付いたままDOIを付与して、データやプログラム・ソースなどの公開を始めました(8誌目)。論文が早期公開されると、『GBRCニューズレター』(ほぼ週刊)で告知されますので、最新刊の案内が欲しい方には配信登録されることをお勧めします。このサイトでは、とりあえず論文の内容を日本語で紹介していきますが、著者本人による公式の要約ではないので、ご注意ください。正確に内容をお知りになりたい方は、ぜひ英語の論文をダウンロードして、読まれることをお勧めします。

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日本語要約付き既刊論文リスト ABAS Article List


Inamizu, N. (2024). Relationship between diversification of place of work and organizational commitment: Comparisons between working at the office, working from home, and shared office use.
Annals of Business Administrative Science, 23(1), 1-19.
doi: 10.7880/abas.0231225a Download (Available online January, 30, 2024)

本研究は、働く場所の多様化と組織コミットメントに正の関係があることを示す。本研究では、インターネット調査を通じて集めたデータ(N=3694)及びシェアオフィス利用者を対象とした調査で収集したデータ(N=424)をもとに、出勤グループ、在宅勤務グループ、シェアオフィス利用グループの比較を行った。その結果、第1に、出勤のみを行うグループに比べて、出勤と在宅勤務の組み合わせや出勤とシェアオフィス利用の組み合わせで働くグループの方が組織コミットメントが高いことが明らかとなった。第2に、出勤と在宅勤務の2つを組み合わせて働くグループよりも、出勤、在宅勤務、シェアオフィス利用の3つを組み合わせて働くグループの方が組織コミットメントが高いことが明らかとなった。このことから、働く場所が多様化することが、「会社に支援されている」という感覚から従業員の会社に対するポジティブな評価に繋がり、従業員の組織コミットメントを高める可能性があることを議論する。

Huang, W. (2023). Adjusting the ratio between idea-driven development and data-driven development in product updates.
Annals of Business Administrative Science, 22(6), 121-132.
doi: 10.7880/abas.0231016a Download (Available online December, 12, 2023)

データの利活用は、かつてないほど多面的かつ明確な顧客洞察を提供することで、企業のイノベーション・プロセスに大きな影響を与えている。しかし、データ・ドリブン開発は客観的なデータに依存し、常に合理性を追及した結果、逆にユーザー動向という束縛に直面している。本稿で取り上げるプロジェクトLは正式リリースの後に、データ・ドリブン開発を採用したが、ユーザー・データにリードされてしまい、プロダクト・アップデートの内容が既存ユーザー向けの保守的なコンテンツになってしまい、アクティブ・ユーザーの伸び率の鈍化という問題が生じていた。幸いなことに、製品リリース後にも開発チームの人員削減を行っていなかったため、プロジェクトLはユーザー動向に基づいてアイディア・ドリブン開発とデータ・ドリブン開発の割合を調整するという開発方針に変更できた。その結果、新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの定着に成功した。

Kobayashi, M. (2023). Interdependence in buyer-supplier relationships: Definitions and measurement.
Annals of Business Administrative Science, 22(6), 107-120.
doi: 10.7880/abas.0231109a Download (Available online December, 8, 2023) 日本語版プレプリント(Jxiv)

バイヤー・サプライヤー関係の研究では、相互依存は、よく使われるキーワードの一つであるが、その定義や測定項目はバラバラだった。本稿は文献レビューの結果、相互依存を巡る研究には2系統があり、各系統で使われる測定項目にはある程度共通性があることも分かった。(1) Pfeffer & Salancik (1978)の資源依存理論を源流とするパワー関連の系統では、取引相手の売上に占める割合や、取引相手の代替可能性、スイッチング・コストが用いられ、(2) Thompson (1967)の技術的相互依存性を源流とするタスク関連の系統では、取引されるインプットやアウトプットへの依存度が測定項目としてよく用いられる。ただし実際には、例えばトヨタ自動車のサプライヤー管理では、技術で決まる部分がある一方、資源依存を避けて複数サプライヤーを利用するなど両方の論理を実践している。

Ando, F. (2023). An Encounter with the Nadler-Tushman congruence model and organizational ambidexterity.
Annals of Business Administrative Science, 22(6), 91-105.
doi: 10.7880/abas.0231005a Download (Available online November 7, 2023) 日本語版プレプリント(Jxiv)

組織変革に関してよく知られた有用なモデルにナドラー=タッシュマンの整合性モデルがある(Nadler & Tushman, 1989, 1997)。一方組織の両利きの議論が近年盛んだが、実は両者が同じ研究者によってほぼ同時期に提唱されていたことはあまり知られていない。この2つの議論はその後、それぞれ独自の発展を遂げるが、その成り立ちから明らかなように、もともと同じ研究関心から枝分かれしたものである。本稿では、Tushmanの研究のレビューを通じて、約30年の年月を経て改めて邂逅した2つの議論に対して、包括的なアイデンティティによる多元的ロジックの統合が必要というTushmanの示唆に基づき、具体的に新たな統合モデルの考案・提示を試みた。このモデルは、現代の組織環境により適合したダイナミックな組織変革のあり方を考える一助となるだろう。

Shimizu, C., & Katsumata, S. (2023). Embedded lead users in the organization and consumer lead users in the market.
Annals of Business Administrative Science, 22(5), 75-89.
doi: 10.7880/abas.0230912a Download (Available online October 14, 2023) 日本語版プレプリント(Jxiv)

市場のリード・ユーザーを特定してアクセスするには非常にコストと労力がかかる。本研究は、リード・ユーザーへのより効率的なアクセスに向けて、組織内部に従業員として存在するリード・ユーザーの割合が、市場に消費者として存在するリード・ユーザーの割合と比較してどのように異なるか検討する。旅行市場を対象に、組織調査と消費者調査を行い、それぞれから得られたサンプルからリード・ユーザーの分布の差異を検証した。その結果,高いリード・ユーザー性を持つ個人の割合は、市場よりも組織内部の方が高いことが明らかになった。しかし、組織内部において、雇用形態によるリード・ユーザー性の有意な差異は示されなかった。

Takahashi, N. (2023). On the “yarisugoshi” phenomenon found in the situation where “decision making by flight” of the garbage can model occurs.
Annals of Business Administrative Science, 22(5), 59-74.
doi: 10.7880/abas.0230810a Download (Available online September 27, 2023) 日本語版プレプリント(Jxiv)

日本語で「やり過ごし」と呼ばれる現象は、ゴミ箱モデルの “decision making by flight” を質問票調査で検出するために見出された。当初、企業人からは、「あってはならない」と否定されていたが、質問票調査でその存在が確認され、1992年に最初の論文が出ている。それから30年、「やり過ごし」は、ゴミ箱モデルやコンピュータ・シミュレーションを離れても、十分に興味深い現象で、今や日本語の代表的辞書『広辞苑』にも載っている。あらゆる組織、あらゆる職種で発生し、ほぼ半数の人が体験している。特に、オーバーロード状況やバカ殿状況においては組織的破綻を回避する機能があり、訓練/選別機能もある。負荷が増えると発生しやすくなる性質があり、メンタルヘルス的に組織的破綻を回避する機能があることもわかってきた。

Yoo, B., Ichikohji, T. (2023). The influence of the public sector in promoting digital transformation during the pandemic.
Annals of Business Administrative Science, 22(4), 47-58.
doi: 10.7880/abas.0230616a Download (Available online July 15, 2023)

本研究では、デジタル化が遅れていた日本が、2020年にパンデミックが発生したことをきっかけに、DX (digital transformation)普及のありかたが変化した点について、その要因を検討する。そのため、2019年から2021年までの3年間の新聞記事の中で「デジタル・トランスフォメーション」あるいは「デジタル化」のどちらかの単語が出現する8297件の記事を対象とした分析を行った。その結果、パンデミックの直後、まず公共部門のDX政策が活発化し、その後、民間部門もDXが盛んになったことで、最終的に公共部門と民間部門両方でDXが活発化したことがわかった。

Hatta, M. (2023). Growing an open source community: Changes in how users and developers involve.
Annals of Business Administrative Science, 22(3), 33-46.
doi: 10.7880/abas.0230320a Download (Available online June 1, 2023)

1980年代におけるフリーソフトウエアの登場以来、ソフトウエアは自由であるべきという信念の問題として語られることが多かった。この時期において主導権を握っていたのはソフトウエア開発者であった。1990年代に入ると開発者ではない一般ユーザーが増え始め、開発者とユーザー、あるいはライセンサーとライセンシーの両面を持つディストロ開発者がイニシアティブを握り、ディストロに都合の良いオープンソースの時代が始まった。しかし、2010年代にはプラットフォームの重要性が高まり、従来のライセンシングによるコントロールが効かなくなった。つまり、フリーソフトウエアやオープンソースの歴史とは、時代によってビジネスのイニシアティブを握る主体が変化してきた歴史だったのである。

Yamashiro, Y. (2023). The organization for roadmap sales & marketing: A case of Company X.
Annals of Business Administrative Science, 22(2), 19-32.
doi: 10.7880/abas.0230224a Download (Available online March 28, 2023) 日本語版プレプリント(Jxiv)

ロードマップ営業とはチームで行う中長期のソリューション営業のことである。単発営業と比べると売上規模が数十倍にもなる。そのためX社は、それまでの単発営業の効率化から、ロードマップ営業へと営業戦略を転換したのだが、営業組織はすぐには適応できなかった。それでもX社は試行錯誤しながら営業組織を適応させ、結果的に劇的な売上増を果たした。本稿では、その取組みを分析し、3つの標準化と1つの軌道修正の仕組みとして提示する。この事例は、一見、個人営業よりも組織営業の方が優れていた事例に見えるが、実際には優れた戦略への転換こそが鍵であり、組織はそれに遅れて適応に成功したのだった。

Inamizu, N., Ikuine, F., & Sato, H. (2023). Looking for a bluebird: Founding and business building process of a Japanese venture firm.
Annals of Business Administrative Science, 22(1), 1-17.
doi: 10.7880/abas.0221130a Download (Available online January 14, 2023)

本研究は、ある日本のベンチャー企業の詳細な事例研究に基づき、起業家の行動とイノベーションのプロセスにおける「無意識に実行されるルーチン」の重要性を示唆するものである。組織のルーチンに関する既存研究では、以下の2点が指摘されてきた。第一に、既存のルーチンに熟達すると、新しい分野の探索(遠方探索)が困難になる(Levitt & March, 1988; March,1991)(探索問題)。第二に、遠方探索は既存のルーチンを失わせる傾向があり、ましてや既存のルーチンと遠方探索の結果を融合して新しいルーチンを生み出すことはできない(Gavetti & Levinthal, 2000; Levinthal & Rerup,2006)(融合問題)。しかし、本研究で取り上げる起業家のKimura及びKimura Information Technology Co., Ltd. (KIT)はこれらの問題を乗り越えて競争優位のある事業の創出に成功していた。そのプロセスを分析することで、無意識のうちに実行されるほどに既存ルーチンに熟達していることがかえって (1)遠方探索を促進すること、(2)遠方探索の結果を既存のルーチンに融合できること、が明らかとなる。

Abe, M. (2022). A real bottleneck that hindered smooth service operation between different units: Case of Kurashiki Chuo Hospital.
Annals of Business Administrative Science, 21(6), 103-115.
doi: 10.7880/abas.0221122a Download (Available online December 9, 2022)

医療組織における安全で円滑なサービスオペレーションの実現が難しいのは、これまで、プロフェッショナルが実践の変化に抵抗するためであると考えられがちだった。これに対して、本稿で取り上げる倉敷中央病院のケースでは、安全で円滑なサービスオペレーションの実現を阻んでいた真の要因は、実際には、ユニット間のコミュニケーション不足だった。

Hatta, M. (2022). The Nebraska problem in open source software development.
Annals of Business Administrative Science, 21(5), 91-102.
doi: 10.7880/abas.0220914a Download (Available online October 13, 2022) 日本語版プレプリント(Jxiv)

Unix哲学に基づいて構築されたオープンソースの世界では、日の当たらない場所にある縁の下の力持ち的なプログラムが、知名度がない一人かごく少数の人間によって、主に個人的な理由で細々と維持されていることがある。しかし、ひとたび、底に近いこの細いプログラムが折れてしまうと、現代社会のインフラストラクチャ全体がバランスを失って崩壊してしまうかもしれない。このことを本稿では「ネブラスカ問題(Nebraska problem)」と呼ぶ。実際に発生した深刻なHeartbleed bugの事例から、これまではLinus's Lawで当たり前だと思われていた「目玉の数」を意図的に確保することが必要であり、かつSBOMのような補完策でriskを事前に検討する必要があることがわかった。

Kosuge, R., & Yasuda, Y. (2022). Understanding serendipity in buying behavior.
Annals of Business Administrative Science, 21(4), 75-90.
doi: 10.7880/abas.0220518a Download (Available online June 17, 2022) 日本語版プレプリント(Jxiv)

購買行動においてセレンディピティの感覚がいかに形成されるかを検討する。具体的には、情報学における先行研究と解釈主義的消費者研究の視点にもとづき、セレンディピティの感覚は、消費者のライフプロジェクトにもとづく、(1)製品との出会い、(2)製品に付帯する文化的意味と自己の関連づけ、そして(3)人生におけるポジティブな展望の構築という一連の予期せぬ意味創造プロセスの影響の影響を受けて形成されると仮定する。このモデルは、2つの購買事例を通じて例証される。実務に対しては、消費者のライフプロジェクトを理解することにより、製品との出会いを戦略的に設計することができると示唆される。

Miyazoe, K. (2022). The concept of community-based marketing.
Annals of Business Administrative Science, 21(3), 61-73.
doi: 10.7880/abas.0220420a Download (Available online June 2, 2022) 日本語版プレプリント(Jxiv)

本稿で提示する新しいマーケティング・フレームワークであるコミュニティベースド・マーケティングにおいては、(i)価値の創造では、顧客となる層の生活課題を解決する観点から製品付随のサービスまでを捉える。(ii)価値の伝達・提供では、企業が創造する価値に関心を持ち共感する顧客と、SNS、アプリケーションなどデジタルな手段で常時接続できるコミュニティを形成する。そこでは顧客間相互の交流も生まれ、新たな価値が創発される。また革新的な価値創造へ向け他企業とも積極的に連携し運営される。このフレームワークにより、現在進んでいる企業のマーケティング活動を的確に説明できると考える。

Ichikohji, T., Nakano, K., & Ogami, M. (2022). Hot market (Abenomics) impact on the time to IPO.
Annals of Business Administrative Science, 21(2), 47-60.
doi: 10.7880/abas.0220125a Download (Available online April 6, 2022) 日本語版プレプリント(Jxiv)

本研究では、IPOにまで至る時間というスタートアップのパフォーマンスに、これまであまり顧みられてこなかったマクロ環境の影響について検討している。日本の経済環境がホットマーケットへと移った2012年の終わり(アベノミクスの始まり)を境として、IPO企業について、対象市場、対象企業の特性(起業type)、実質的な創業タイミングといった変数を考慮した分析を行った。結果として、経済的に良い環境にある方が、創業から上場までの平均時間が長くなる現象がみられた。これは様子見をしていたスタートアップが、景気が良くなることにより、IPOを果たせるようになったからだと考えられる。つまり、単純にパフォーマンス指標としてIPOまでの時間を用いることには疑問があり、用いる際には注意がいる。

Tomita, J. (2022). The logic of bankruptcy of top manufacturers in photovoltaic industry.
Annals of Business Administrative Science, 21(2), 31-46.
doi: 10.7880/abas.0220216a Download (Available online April 5, 2022)

2000年代後半〜2010年代前半の太陽電池製造では、上位メーカーが数年以内に交代し、経営破綻していた。なぜこのような現象が起こるのか。一般的には、各国の太陽光発電産業で、普及促進政策と引き締めによるバブルとその崩壊が起きたために、上位メーカーが破綻したと考えがちである。しかし、太陽電池は世界のどこの国でも売れるもので、しかも、太陽電池の世界市場は拡大し続けているので、各国のバブルとその崩壊だけでは太陽電池メーカーの浮沈を説明できない。実は、(i) 欧米製造企業のターンキーソリューションで参入が容易になったところに、中国では、成功者を見て周りがそれを真似てどんどん起業したために、多数の企業が短期間に次々と起業・参入し、他国の企業は低価格で破綻した。しかし、(ii) その中国企業でさえ、旺盛な起業による慢性的な供給過剰の中で、稼働率は低下しており、上位メーカーでも、ちょっとしたきっかけが致命傷となり破綻していった。

Takahashi, N. (2022). Emergent strategies for gas stations to survive in a carbon-neutral age: The challenge of Yamahiro.
Annals of Business Administrative Science, 21(2), 15-29.
doi: 10.7880/abas.0220204a Download (Available online April 2, 2022) 日本語版プレプリント(Jxiv)

日本では、価格競争によりガソリンで利益の出なくなったガソリンスタンド(GS)は四半世紀で数が半減した。追討ちをかけるように、日本政府は2035年にガソリン車とディーゼル車の販売を終了する方針を掲げた。そんな中、GSの会社ヤマヒロは、(A)傘下のGSを油外サービスで、車検・点検、洗車・コーティング、レンタカーの3グループに分け、各店舗の訴求サービスを絞り込んで専門性を高め、(B) セルフサービスGSにもかかわらず、店頭の人員を減らさずに、車番認証システムと車両情報管理システムを連動させて、油外・サービスの利益向上につなげ、(C) レンタカー事業と中古車販売事業にもその車両情報を活用してシナジー効果を生み出し、(D)石油元売から不採算店を従業員丸ごと引き受けて再教育して立て直すことでGSの数を増やしてきた。こうして、東京圏で業容を拡大するとともに、利益の40%を油外サービスから稼ぎ出すまでになり、日本経営品質賞(Japan Quality Award; JQA)を受賞した。

Yamada, K. (2022). The birth of the Japan Aquarium Association: Beyond coercive and competitive isomorphism.
Annals of Business Administrative Science, 21(1), 1-14.
doi: 10.7880/abas.0211229a Download (Available online January 20, 2022)

組織の同型化メカニズムとしては、制度的同型化(強制的同型化、模倣的同型化、規範的同型化)と競争的同型化が知られている。World Association of Zoos and Aquariums (WAZA)は、野生のイルカの捕獲問題を巡って、除名処分も示唆しながら日本動物園水族館協会(Japanese Association of Zoos and Aquariums; JAZA)に圧力をかけ、強制的同型化が発生した。その際、JAZAが団体規則や会員資格基準の厳格化等の措置を採ったため、賛同できない多くの水族館がJAZAから離脱していく競争的同型化がJAZA内部で発生した。その結果、水族館の、水族館による、水族館のための組織として、日本水族館協会(Japan Aquarium Association; JAA)が誕生した。すなわち、業界団体レベルでの制度的同型化は、その所属組織レベルでの競争的同型化をともなっていたわけで、業界団体の制度的環境への適応と所属組織の選択が同時に起こった。

Sugawara, T. (2021).Growth of university entrepreneurial ecosystems.
Annals of Business Administrative Science, 20(6), 283-296.
doi: 10.7880/abas.0211116a Download (Available online December 11, 2021)

本稿は東京大学本郷キャンパス周辺に集積している日本のベンチャー企業が形成する起業エコシステム(entrepreneurial ecosystem)に関する研究である。大学を中心として集積した234社のベンチャー企業について経年で分析したところ、2004年から大学主導でインキュベータを中心に起業エコシステムが形成され始め、2014年頃を境にインキュベータ外のベンチャー企業の新規集積が増え、大学のコントロールを超えた起業家主導の起業エコシステムに成長していた。

Fukuzawa, M. (2021). Transition of the concept of total optimization in Japanese companies.
Annals of Business Administrative Science, 20(6), 269-282.
doi: 10.7880/abas.0211118a Download (Available online December 10, 2021)

近年、全体最適を目指す技術開発やサプライチェーン・マネジメント, DX等の取り組みが行われている。本稿は全体最適や部分最適の用語が、日本企業でどのような文脈で使われてきたのか、新聞記事の言及頻度と傾向に基づき分析した。全体最適は1980年代後半から紙面に現れ始め、その解決策SCM, BPR, ICT等と一緒に長年論じられてきた。実は、全体最適が注目され続けてきたことは、公式組織が成立してないことを示唆している。横断的組織連携のようなコミュニケーション促進や情報技術の導入・活用への焦点化が進んだ一方で、そもそも何のための最適化であるのかには十分に焦点が当てられておらず、依然として公式組織の成立要件は十分に満たされていない。

Shimizu, T. (2021). Infectious disease and labor management: A retrospective look at Japanese society before WWII.
Annals of Business Administrative Science, 20(6), 253-267.
doi: 10.7880/abas.0211021b Download (Available online December 10, 2021)

20世紀初頭、スペイン風邪や結核が流行した頃の日本の繊維産業の労働者は、劣悪な環境の中で長時間労働に従事しており、感染症に感染するリスクも高かった。そんな中、先駆的な企業は、感染症に対する自発的な対策として、病院の設置、病気時の無償の医療提供や扶助料の支払い、寄宿舎の改善を行い、さらに工場の改善や教育プログラムの提供のような労働者福祉のための施策を導入した。このような施策が他の企業にも波及し、結果として多くの企業の労働環境が改善したことは、感染症対策が経済合理性にかなったものであったことを示している。このことは現在のCOVID-19に対しても衛生環境改善や労働者福祉向上が経済合理的であることを示唆している。

Konno, Y., & Takai, A. (2021). Modularization as disruptive innovation.
Annals of Business Administrative Science, 20(6), 239-251.
doi: 10.7880/abas.0211104a Download (Available online December 4, 2021)

1990年代以降、電機製品で顕著に見られたモジュラー化の動きは、通常は製品アーキテクチャのイノベーションと捉えられる。しかし実は、技術と顧客/市場との関係性において、(1)技術レベルと製品価値がダウングレードし、その結果として、(2)従来までの正統性が通用しなくなる、といった破壊的イノベーションとしての特徴も有していた。それゆえに既存の有力日本企業は、決してイノベーションを怠っていたわけではないにもかかわらず、当初はオモチャに思えたモジュラー化で生まれた新製品に市場を奪われていったと考えられる。

Hatta, M. (2021). Cowboys and the eternal September: Transfiguration of hacker aesthetics.
Annals of Business Administrative Science, 20(6), 223-237.
doi: 10.7880/abas.0210923a Download (Available online November 19, 2021)

ハッカーのイメージは、1970年代に端を発し、1980年代から徐々に形成されてきた。特に1990年代から2000年代初頭にかけては、GNU/Linuxなどのオープン・ソースの台頭もあって、さまざまな文脈で活発に議論された。その後、時代の変化もあって、優秀なプログラマーに求められる資質は大きく変わった。従来はコードを書く能力が最も重視され、社会性は軽視されていたが、コンピュータがより一般的になり、社会的影響力を増すにつれ、ハッカーは様々な方法で社会と折り合いをつけなければならなくなり、多くのオープン・ソース・プロジェクトが行動規範を導入した。

Hamamatsu, S., & Fujita, M. (2021). Adapting the effectuation model for nascent entrepreneurs: The function of acceleration programs.
Annals of Business Administrative Science, 20(6), 211-222.
doi: 10.7880/abas.0211021a Download (Available online November 19, 2021)

Sarasvathy (2008)のエフェクチュエーション動学的モデルは熟達した起業家を対象に理論構築された。では駆け出しの起業家にはどのようなモデルが当てはまるのか。そこで本稿ではコオロギを生物資源として事業化した駆け出しの起業家の事例研究を行なった。すると、起業に興味はあるものの、すぐに行動を起こすことができず、何をすべきか悩んでいる駆け出しの起業家は、複数のビジネス企画コンテスト等のアクセラレーション・プログラムに次々と参加することで、エフェクチュエーション・プロセスを実行できていた。その際、アクセラレーション・プログラムには、(1)所与の手段からのゴール設定を支援し、(2)社会ネットワークを使わせることで相互作用を促進し、(3)信用を付与することでコミットメントを得やすくする3つの機能があった。

Akiike, A., & Ichikohji, T. (2021). What are the requirements for design thinking articles?
Annals of Business Administrative Science, 20(6), 197-209.
doi: 10.7880/abas.0210930a Download (Available online November 12, 2021)

本稿はデザイン思考が経営学でどのように研究されているかを検討した。主要な経営学ジャーナルに掲載されている論文をレビューした結果、(a)デザイン思考については複数のコア研究からなりたっており、様々な要素が含まれているものの、(b)直近の実証研究は、Brown (2009)及びMartin (2009)の議論を踏まえて、実践やツールと合わせて議論し、ユーザ中心及び実験というテーマについて言及している点は共通していた。

Wada, T. (2021). Small development projects for developing overall understanding of product components.
Annals of Business Administrative Science, 20(6), 183-195.
doi: 10.7880/abas.0210924a Download (Available online October 28, 2021)

テレビゲームは、世界観、シナリオ、グラフィックス、音楽などの要素のインテグリティが求められる。テレビゲームの製品開発プロジェクトにおいて、各要素の設計・調整を行う人材には、製品の構成要素の全体的な理解が必要となる。20年以上前の日本のテレビゲーム産業では、新入社員が入社してすぐに製品の各要素を設計・調整する場に参加することができ、製品の構成要素の全体的な理解を身に着けることができた。しかし、近年の開発プロジェクトの大型化により、新入社員に割り振られる作業は細分化・モジュール化され、製品の構成要素の全体的な理解を身に着けることが困難になった。この問題に対し、日本のテレビゲーム開発会社のサイバーコネクトツーは、小規模の実験的なテレビゲーム開発プロジェクトを立ち上げ、これを若手社員に担当させることで解決を図っている。

Kikuchi, H. (2021). Is boundary-spanning exploration effective?: Replication study with the case of vector control technology for electric motors.
Annals of Business Administrative Science, 20(5), 169-182.
doi: 10.7880/abas.0210914a Download (Available online October 8, 2021)

Rosenkopf and Nerkar (2001) は、光ディスクを技術ドメインとした特許の引用データを用いて、組織や技術ドメインの越境引用をした特許の方が、後続の特許へのインパクトが大きくなることを検証した。しかし、分析結果は、明らかに技術ドメインの大きさに影響を受けるはずである。そこで本稿では、(a)電動機のベクトル制御技術と、(b)(a)を含むより大きい技術分野、を対象として分析し比較した。その結果、越境引用をしても、(a)ベクトル制御技術では、ドメイン外インパクトは一部あったが、ドメイン内インパクトはなかった。それと比べて、より大きい技術分野(b)では、ドメイン内インパクトは一部あったが、ドメイン外インパクトは減った。つまり、電動機のベクトル制御技術でも仮説は部分的に支持されたが、技術ドメインを広くとるほど、ドメイン内インパクトは強くなり、ドメイン外インパクトは弱くなる傾向があり、インパクトは技術分野の粒度の設定に依存している。

Ando, F., (2021). The influence of individual and organizational ambidexterity on their interpretations of the workplace.
Annals of Business Administrative Science, 20(5), 155-168.
doi: 10.7880/abas.0210830a Download (Available online September 30, 2021)

同じ物事でも解釈の仕方が異なれば、解釈した者や組織の行動、結果が大きく変わることは、多くの先行研究が指摘している。本稿は、社員が職場としてのオフィスをどのように解釈するのかを、組織学習論の「両利き」概念の観点から分析した。日本の東京首都圏のホワイトカラー正社員1,650名を対象に実施した質問票調査データを分析したところ、(a) 活用と探索との間には有意な正の相関があり、両者の間には、従来考えられてきたトレードオフの関係はなかった。(b) 活用と探索が高い水準で両立した「両利き」グループはオフィスを「コミュニケーション」の場所と解釈し、両者が低い水準に留まる「双方なし」グループはオフィスを「集中」する場所と捉える傾向があった。

Sato, H., & Makabe, T. (2021). Is shared leadership shared?
Annals of Business Administrative Science, 20(5), 151-153.
doi: 10.7880/abas.0210901a Download (Available online September 25, 2021)

本研究では、シェアド・リーダーシップの定義と測定方法について検討した。これまでの研究では、シェアド・リーダーシップの定義については基本的に共通の特徴を要素としていた。しかし、測定方法については、異なる特徴を持つ2つのアプローチ、アグリゲーション・アプローチとソーシャル・ネットワーク・アプローチが併存している。前者は既存の様々なリーダーシップ概念と組み合わせて測定されており「リーダーシップ」の部分を重視している。後者はどのようにリーダーシップがシェアされているかに焦点があり「シェア」の部分を重視している。

Yamauchi, N., & Sato, H. (2021). Diverse more than ever.
Annals of Business Administrative Science, 20(5), 121-140.
doi: 10.7880/abas.0210901b Download (Available online September 23, 2021)

トップマネジメントチーム (TMT) のダイバーシティーが企業パフォーマンスに与える影響の研究結果は様々であり、一貫した結果は得られていない。本研究では、TMTのダイバーシティーに関して2005年から2020年に発行された論文を対象に、TMTとダイバーシティーの操作的定義を確認した。その結果、TMTの操作的定義には、(a) 職位で抽出する、(b) CEOもしくはそれに準じる経営トップが選出する、(c)企業の公開情報・データベースで公表された役員とする、の3パターンが確認された。またダイバーシティーに関しては、これまでのような役員の属性のバラエティーを表す指標を使ったものに加えて、分断や格差といった側面からダイバーシティーを捉える研究も多く存在することが確認された。こうした操作的定義の「ダイバーシティー」がTMTのダイバーシティーと企業パフォーマンスの関係に一貫性がない原因と考えられる。

Takahashi, N. (2021). Telework and multi-office: Lessons learned from the bubble economy.
Annals of Business Administrative Science, 20(4), 107-119.
doi: 10.7880/abas.0210705a Download (Available online August 11, 2021)

近年、日本ではテレワークやワーケーションが話題になるが、実は1990年頃の日本でも同様の議論があった。当時、マルチハビテーションが注目されたが、実際には、1人の管理職が、東京圏の本社・親会社と地方の支社・子会社の2ヵ所のオフィスのどちらにも所属しているような状態であるマルチオフィスの方が本質的に重要だった。マトリックス組織が進化したこの状態で重要なことは、どこに住むかではなく、どこで働くかということだった。こうした教訓があるにもかかわらず、いまやテレワークはコロナ禍で在宅勤務と同義語のようになってしまい、ワーケーションも自治体側の「住んでほしい」という念が強すぎる。マルチハビテーション同様、どちらも住む呪縛が解けない。しかし、テレワークやワーケーションにおいては、自宅もしくは自宅近くで働くことよりも、マルチオフィスを実現することの方が重要である。それは30年前もそうだったし、コロナ禍以降でも変わらない。

Nakano, K. (2021). Support system that foster human resources for university start-ups in Japan.
Annals of Business Administrative Science, 20(3), 93-106.
doi: 10.7880/abas.0210322a Download (Available online June 15, 2021)

1990年代後半以降、日本では米国型の技術・資金・制度を原型にするcloning Silicon Valley modelが導入され、技術移転、特許収入、ファンドの組成が大きく注目されてきた。しかし、起業クラスターを形成してきた東京大学の場合は、学部学生・大学院生を教育して、金融機関・大企業・中央官庁で働く卒業生のネットワークを支援者のネットワークとすることで、技術の集積以上のエコシステムを構築してきた。産学連携のエコシステムの形成には、こうした自らは起業しなくても、起業を理解し、広く社会で活躍する人材の教育・育成こそが重要である。

Ikuine, F. (2021). The development productivity dilemma: Managing the flow of a series of new products.
Annals of Business Administrative Science, 20(3), 79-92.
doi: 10.7880/abas.0210317a Download (Available online April 22, 2021)

IT化に伴い、開発プロジェクトが継続されていく事例が増えている。しかし、それまでに蓄積したデータや開発のノウハウを活用して開発生産性の向上を目指すと、今度は、それに縛られて、製品機能の拡充が難しくなる。実際、各製品においては、開発生産性の向上と製品機能の拡充が両立しがたいという “開発生産性のジレンマ” は確かに存在している。しかし、本稿で取り上げる事例では、企業は、ある製品で、開発生産性を犠牲にして製品機能の拡充を行うと、次の製品でそれを流用したり、利用して簡略化したりすることで開発生産性の改善、つまり、連続した新製品の流れとして管理することによって、開発生産性のジレンマを克服していた。

Liu, Q., & Takahashi, N. (2021). Career perspective: Motivation of Chinese employees graduating from Chinese universities and working for Japanese companies.
Annals of Business Administrative Science, 20(2), 63-78.
doi: 10.7880/abas.0210213a Download (Available online March 12, 2021)

中国の大学・大学院を卒業して日本で日本企業に働く中国人社員をインタビュー調査した結果、先行研究で指摘されていた異文化間ギャップ、日本語力、職場での人間関係といった要因は4面モチベーション・スコアとあまり関係していなかった。しかし、キャリア・パースペクティブの存在は学習をはじめとするモチベーション・スコアに関係しているようだった。モチベーション・スコアが低かった中国人社員は、日本国内での就職活動では行われている説明会や先輩社員とのコミュニケーションの場が制約され、キャリア・パースペクティブをもてなかったために、入社後に、目の前の仕事への不満が顕在化したようだった。

Hanahara, S. (2021). How collaboration between industrial designers and other members related to product development affect innovation and efficiency.
Annals of Business Administrative Science, 20(2), 47-62.
doi: 10.7880/abas.0210127a Download (Available online March 4, 2021)

部門間連携は革新性と効率性にとって重要だと言われている。本稿では、部署も性格も異なるID (industrial design:インダストリアル・デザイン)とED (engineering design:エンジニアリング・デザイン)を明確に区別し、特にインダストリアルデザイナーと製品開発に関わる他部門との間の部門間連携が、革新性と効率性に与える影響を文献レビューした。その結果、(1)革新性に関しては、部門間連携はデザイン・イノベーションに正の影響を与え、CE型部門間連携は、テクノロジー・イノベーションに正の影響を与えると指摘されていた。(2)効率性に関しては、製品開発プロセスの効率への影響は一貫しておらず、そもそも生産効率は調べられていないことが分かった。

Tsukamoto, Y. (2021). Rethinking telecommuting with an i-deals perspective.
Annals of Business Administrative Science, 20(1), 33-46.
doi: 10.7880/abas.0210115a Download (Available online February 11, 2021)

COVID-19の影響により、日本ではテレコミューティングが急速に普及した。従来のテレコミューティング研究では、テレコミューティングはi-dealsの結果であり、location flexibility i-deals (LFi-deals)であるという前提で議論が行われてきたが、COVID-19の流行下では、半強制的なテレコミューティングが出現した。そこで本研究では、(Group A)依然として「出社」、(Group B)半強制的に出現したテレコミューティングと考えられる「テレコミューティング (初経験)」、(Group C) LFi-dealsを結んだ結果のテレコミューティングと考えられる「テレコミューティング (経験あり)」の3群に分けて、degree of self-determination (DSD)及び生産性との関係を調べた。分析の結果、同じテレコミューティングでもLFi-dealsを結んでいるGroup Cの方が半強制的なGroup Bよりも、DSDも生産性も有意に高かった。ただし、Group BもGroup Aよりは高くなっており、単にテレコミューティングを始めただけでも、LFi-deals、DSD、生産性が高まる可能性がある。

Yoshida, T. (2021). How has workcation evolved in Japan?
Annals of Business Administrative Science, 20(1), 19-32.
doi: 10.7880/abas.0210112a Download (Available online February 10, 2021)

労働と休暇を組み合わせて行うワーケーションは、ICTの浸透に伴って欧米で登場した概念で、freelancer等に象徴される個人の自由な働き方とされるが、日本においてはその元来の意味合いを離れ、一部のトレーニング・プログラムがワーケーションと称されるなど、特異な展開が見られる。こうした変化はどのようにして生じたのだろうか。本研究では3つの地域における調査を踏まえ、日本において特徴的なサテライトオフィス・ワーケーション、ラーニング・ワーケーション」の登場経緯やそれらを取り巻く各主体の狙いを整理した上で、(1)日本では主に雇用労働者が想定されていること、(2)それ故、地方自治体の思惑(「交流人口に繋げたい」)と企業の思惑(「仕事に係わる目的がないと社員を地方に送り出し難い」)が大きな影響を与えていること、(3)その結果、ワーケーションが「地域との深い関りの中で学びや内省、創造力の向上を図る」方向へ変化してきたこと、を明らかにする。

Wang, Z., & Suh, Y. (2021). Multiskilled labor management of Japanese commercial vehicle makers in the Chinese market: The cases of Hino and Isuzu.
Annals of Business Administrative Science, 20(1), 1-17.
doi: 10.7880/abas.0201201a Download (Available online January 17, 2021)

急成長する中国の大型商用車市場では、「生産規模が年1万台を超えなければ生き残れない」法則がいわれてきた。しかし日系メーカーの広汽日野と慶鈴汽車は、生産規模が1万台に満たないながらも中国市場で利益を出し続けている。これは、少量生産でも一定水準の生産性を保てる日本的生産システムのおかげだが、中国の日系商用車メーカーは、中国の実情に合った多能工育成方法を発展させたことで、その日本的生産システムを機能させることに成功した。
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