GBRCニュース   2019.04.22

---

今週のABAS早期公開論文は次の論文2本です
 Yamashiro, Y. (2019). 
   Disincentives of organizational routines transfer. 
 Kuwashima, K. (2019). 
   Classification for measuring the impact of open innovation on practice.
 

Annals of Business Administrative Science (ABAS)は、独立行政法人科学技

術振興機構(JST)の電子ジャーナル・サイトJ-STAGEの早期公開機能を導入して

います。「ABASの日本語サイト」

http://www.gbrc.jp/journal/abasjp/

には、日本語の要約も掲載され、早期公開版のダウンロードも可能です。

早期公開は論文採択後できるだけ速やかに行われますので、早期公開版の公開は

不定期になります。ということで、今週は次の論文2本が早期公開されました。

------------------------------------------------------------------------

Yamashiro, Y. (2019).

Disincentives of organizational routines transfer:

Case of adaptive radiation in a sales and marketing company.

Annals of Business Administrative Science.

https://doi.org/10.7880/abas.0190303a

Download (Available online April 3, 2019)

 

本稿が取り上げる営業組織変革の事例では、優れた成果をあげる組織ルーティン

が形成され、他組織にも利用可能な形で見える化・標準化されていたにも関わら

ず、営業拠点間で移転しなかった。その原因は、「組織はKPIを達成すれば、そ

の自律性が保障される」という営業組織のルールの存在だった。すなわち、各営

業拠点がKPIを達成している好業績組織においては、各営業拠点は高い自律性を

保障されているので、(a)独自に組織ルーティンを改善していい、(b)他組織の組

織ルーティンを押し付けられない。つまり、好業績組織において、組織ルーティ

ンは、(a)各営業拠点で独自進化し、(b)各営業拠点間では横展開しないという適

応放散が観察された。

------------------------------------------------------------------------

Kuwashima, K. (2019).

Classification for measuring the impact of open innovation on practice.

Annals of Business Administrative Science.

https://doi.org/10.7880/abas.0190314a

Download (Available online April 6, 2019)

 

Chesbrough (2003a)が提案したオープンイノベーションは、学会のみならす実務

にも多大な影響を与えた。しかし、オープンイノベーションの定義が広く多義な

一方で、Chesbrough自身がオープンイノベーション の具体例(オープンイノベー

ション・プラクティス(OIP))を明確に示さなかったために、実務家は多様な解釈

をした。したがって、オープンイノベーションの実務に対するインパクトを正確

に測定するためには、OIPをいくつかのタイプに分類する必要がある。本稿では

その分類法を2つ提案する。第1は、Chesbroughと実務家がOIPと呼ぶものが一

致しているかどうかである。この視点によれば、OIPは、次の3つに分類できる

(a) Chesbroughも実務家もそれをOIPと呼ぶ、(b) ChesbroughはそれをOIPと呼ぶ

が、実務家は呼ばない、(c) ChesbroughはそれをOIPと呼ばないが、実務家は呼

ぶ。(a)は明確にオープンイノベーションのインパクトと評価できる。一方、

(b)(c)の解釈には注意が必要である。第2は、現在OIPとして実施されている活

動に関して、それが (i) Chesbrough2003)より前に開始されたのか、

(ii) Chesbrough2003)以後に開始されたのか、の区別である。(ii)はオープ

ンイノベーションのインパクトと評価できるが、(i)は従来から行われていたプ

ラクティスの呼び方を "OIP" と変えたに過ぎない。(i)をオープンイノベーショ

ンのインパクトに含めると、過大評価となる可能性がある。

------------------------------------------------------------------------

とりあえず論文の内容を日本語で紹介しますが、著者本人による公式の要約では

ないので、ご注意ください。正確に内容をお知りになりたい方は、ぜひ英語の論

文をダウンロードして、読まれることをお勧めします。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/abas/advpub/0/advpub_0161125a/_article

J-STAGEの「早期公開」(Advance Publication)は、巻・号・ページ等の書誌情報

が未確定の論文を公開できる機能です。早期公開版も本公開版も同じDOIが付与

され、同一の論文として扱われ、Google Scholarにもデータが提供されます。

 

早期公開された論文は2ヶ月に1号のペースでまとめて、巻・号・ページ等を

確定してからJ-STAGEで本公開するとともに、学術論文を中心とした学術情報を

検索して利用できる世界的なオンライン・データベースEBSCO host (有料)

---

特定非営利活動法人グローバルビジネスリサーチセンター(GBRC)

 電話 050-3825-0915

 E-mail info@gbrc.jp