GBRCニュース   2002.11.25

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新企画: 国際会議便り「組織のイノベーション」

 

今回から新企画がスタートします。

といっても、ネタがあったときだけの不定期のコーナーですが……。

最近、用語解説のコメンテーターとのやりとりが、だんだんとマニアックになっ

てきたので、もっと気楽に読める読み物が欲しいという読者からのご要望が寄せ

られていました。そこで、そのご要望にお応えして、GBRCの理事の先生たちのご

活躍やらこぼれ話やらを新鮮なうちに「○○便り」という形でニュースとしてご

紹介することにしました。新企画の第一弾は、藤本隆宏教授(GBRC常務理事)の

「お土産話」があまりに面白かったので、そのまま「国際会議便り」として原稿

にしていただいたものです。さすが藤本先生。

 

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 御報告が遅れましたが、先週の11月7日と8日、パリでサンゴバン(Saint

Gobain)経済研究センターの「組織のイノベーション」国際会議が有り、出席し

て論文発表してきました。私のテーマは、懲りもせずアーキテクチャ論です(さ

いわい英語です)。サンゴバンはガラスや建材を作って成長しているフランスの

会社で、ここがスポンサー。わが青木昌彦スタンフォード教授(経済産業研究所

長、つまり私のボスでもあられます)、ハーバードのモジュラー派の気鋭カーリ

ス・ボールドウィン女史、進化経済学のピサの怪人ジョバンニ・ドシ、レギュラ

シオンの巨匠ロベール・ボワイエ、サセックスの重鎮キース・パビット、そして

経済成長論のノーベル賞ロバート・ソロー大先生など、錚々たる顔ぶれでした

が、なんと主題はモジュラー化で(青木先生の影響ありあり)、経済学の本流に

もアーキテクチャが影響を与え出したかと、びっくりしました。以上は我田引

水。

 私は東大の水曜の教授会の後、夜10時成田発の夜行で午前4時過ぎにパリ

着、仮眠の後9時半からトップバッターでアーキテクチャ戦略の論文発表、とい

うめちゃくちゃなスケジュールでしたが、ソロ−大先生から「世の中の3分の2

はサービスなのだからサービス業にアーキテクチャ概念を適用しなけりゃダメだ

よ」とコメントいただいたのは恐縮しました。また、MITのスタインフェルド

(フェルドスタインではない)という中国経済専門の政治経済学者が、とても

シャープで良く、人柄もよく、中国をモジュラー化で切るというアプローチに賛

同してくれているので、これからいろいろと連携できそうな感じです。「プラッ

トフォームリーダーシップ」をMITのマイク・クスマノと書いたアナベル・ゴウ

ワー(INSEAD)も私の発表を聞きに来てくれていて、いろいろ研究連絡しようと

の話になりました。フランスの若手の女性研究者で、頭も人柄もとても良い人で

す。私は国籍男女にかかわらず、人柄の良い学者が好きです。

 この会議ではサンゴバンの社長も発表をしましたが、たまげたのは、「ロベ−

ル・ボワイエ先生の戦略類型に従って、我が社は『バラエティとリーダーシップ

戦略』に集中しており、それが我が社の急成長につながっている」と言っていた

ことです。かのマルクス派経済学者の大物、ボワイエ氏が戦略コンサルティング

をやっているところがフランスらしいシュールさです。ボワイエに「幾らでやっ

ているの」とあとで聞いたら、そりゃもちろんタダだよ、とレギュラシオン派ら

しい(?)返事でした。そりゃ大変な価格破壊だ、ボスコンもマッキンゼ−もパ

リでは商売にならなりません。

 翌日の深夜23時の飛行機で成田に帰り、結局パリは1泊3日の強行軍でした

が、さすがサンゴバン、中日の夕食はパリ市内の三ツ星レストランで、そりゃ凄

い料理でした。これだけでも行った甲斐が有りました。とりあえず御報告まで。

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