コンテンツビジネス研究会は、テレビゲームなど娯楽性の高いビジネス産業に関する情報交換の場です。

第8回 2006年 5月17日 水曜日 開催
シークレットガーデン ゲームディレクター 
石山隼行氏

「コンテンツとしてのMMOコミュニティ」

<プレゼンテーション>

  • フロントメディア提供の新規携帯サイト「まるごとアニメ」(日本動画協会公式サイト)のご紹介

      荒れないコミュニティをMMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game)で実現した「女神幻想ダイナスティア」の手法の解説と、これにより可能となったコミュニティの質と世界観をコンテンツとして高めていく方法、これまでとこれからのネットコンテンツ運営への指針と提言など。

  • オンラインRPGの歴史

    1996年 Ecllusion(日本)、MMORPGの元祖(石山さんが作成)
    1997年、Ultima Online(アメリカ)商業的に成功した初めてのMMORPG
    しっかりした世界観をインターネットないに構築
    多くのプレイヤーが存在し、現在もバージョンアップを繰り返して運用を続けている
    韓国のリネージュ、ラグナロクオンラインにより一般化
    韓国産のオンラインゲームは数多くある
  • 一般的なMMORPGの現状
      高度なビジュアル
      ゲーム性には疑問符
      戦いの結果だけの追求になっている(果たしてゲームとして面白いか?)
      ゲームプレイが「作業」になる現実(他のプレイヤーとの勝負にこだわるあまりプレイ自体が楽しくない)
  • RMT(Real Money Trade)の出現

    • 現実のリアル貨幣でバーチャルな商品を売買すること
      職業ゲーマーの出現(売るためにゲームをひたすらプレイする人)
      仲介業者やネットオークションを利用して売買
      社会問題化
      ゴールドファーマーの出現
  • ネットワークゲームの3大要素

      コンテンツ性(より情報の量、質の向上)
      ゲーム性(より面白く)
      コミュニティ性(より健全に)

       

      MMOとコミュニティ
      コミュニティとしてみたときのMMOの持つ問題点
      MMOはコミュニティ足りえるか?
      コンテンツ価値と個人の価値、価値観について
      コミュニティとしてみたときのMMOの問題点
      O ゲームであること、勝負の世界
      O 弱肉強食
      O 自由度が高いゆえに無法行為も可能になる(人を殺すことができる)
      O 感情の拡大再生産


      行動学の観点からの分析
      集合とは:単なる個のあつまりではなく自立した存在。生物と同じように成長する。集団間で相互に作用しあう
      人間が集団になると退行現象(集団心理)が見られる
      コミュニティでの競争心が加速する危険性
      オンラインゲームに見られるサバイバルゲームの現象の出現
      ログイン時間に正比例する生存率
      当初からプレイしているベテランには新人はかなわない
      初心者は多いが、弱い。プレイ時間が長い強いプレイヤーは一握り


      MMOはコミュニティ足りえるか
      ゲーム性と個みぃうにティ性のバランス
      ゲーム性を高めるほど荒れやすい
      アイテム販売の有効性(バーチャルなアイテムをリアルなお金で運営者が正規に販売する)⇒昨今のネットワークゲームでの有効なビジネスモデル
      ただしかえって競争心をあおる可能性
      RMTとの組み合わせから賭博に近くなる可能性(法規制?)
      アイテム販売により強さが加速し、最終的にはインフレーションする危険性(価値の急落)


      コンテンツの価値について
      情報の質と量の価値
      量と質の向上に努めているが限界がある
      美しいムービーも驚きは繰り返し見ることで半減
      しかしMMOは運営時間に比例して情報量も増大する(アップデートができる)
      コミュニティ・コンテンツ
      プレイヤー参加型コンテンツでは、プレイヤーがお互いに情報発信をするので、情報価値は増加し続ける
      しかし、運営側が何もしなければ、コミュニティの質は低下してしまう

      ダイナスティアの設計
      コミュニティ重視
      戦闘を排除
      女性向け(ターゲットを絞る)
      恩人システムの導入(コミュニティにおけるお互いの関係性を重要にするための仕組み)
      お金を排除、物物交換

      一般的なMMORPGで行われているアイテムを奪うのではなくアイテムを与えることが重要
      正しい方向のコミュニケーションを連鎖させていく
      力以外の価値で評価する⇒装着(見た目)の価値を提案し、競争心をあおらない
      アイテムが時間とともに消えていくためインフレーションが防止。情報量が一定量に保たれる
      コンテンツの魅力に異世界感を
      強いストーリー性を導入、ゲームの中心に
      居心地のよさをコンテンツ化する
      SNSはゲームではないが同じようにコミュニティを重視したものになっている

      ドラえもん分類マトリクス
      コミュニケーション重視MMOでのプレイヤーの5分類
      モラルの高低(たて)と社交性の高低(よこ)で分類
      科学者(できすぎくん)モラル高・社交性低
      アイドル(しずかちゃん)モラル高・社交性高
      パワフル(ジャイアン)モラル低い・社交性低
      コバンザメ(スネオ)モラル低い・社交性高
      一般(のびた)真ん中
      4つのどれかに憧れ、どれかに寄って行く
      人の影響を受けやすい
      プレイヤー個人の分類だけでなく、コミュニティの質にもつかえる
      コミュニティの質の高低(たて)、コミュニティの大きさとで分類(よこ)
      では時間の経過に伴って拡大するコミュニティに対し、どうやってコミュニティの質を上げていくか?

      コミュニティの運用
      コミュニティが荒れるメカニズムの解明
      コミュニティの成長と成熟によって「荒し」の種類も変わる
      正しく運用することでコミュニティ性を増大し質を上げ、MMOとしての価値を上げる
      ドラえもん分類における各個性ごとの対応が重要

      理想的な運営体制
      三権分立の必要
      企画
      管理
      サポート(ゲームマスター)
      (現在はこの3つが混然一体となっている)
      混然とすると、プレイヤーには神様に見えてしまう
      企画者にはゲーム性、面白さ
      管理者には厳格さ(問題への対処)
      サポートには愛情           
      がそれぞれ必要
      これら3つの力がそろっているところはまだ少ない

      提言
      コミュニティの質には運営の質が反映される
      荒れることのないコミュニティを目指す
      インターネット上のバーチャル社会学の必要性

    <質疑応答>

       


      Q:「コミュニティにおいて秩序を保つことの重要性がよく分かった。女性に限定するきっかけ、理由は?」
      A:「開発当時の戦闘中心のMMOの運営経験から、インターネットが普及しはじめたころで、個人の掲示板などに見られた女性のコミュニケーション欲求が非常に高かったので、コミュニケーションが中心となったコミュニティを作りたいと思った。」


      Q:「ゲームの外のコミュニティ(Mixiなど)で立ち上がっている同好会をどう見ているか?(あおってほしくない、抑制したいなど)」
      A:「どのようにうまく導いていくかを考えているところ。自由はあるが、彼らにとって安心してコミュニケーションがしやすい仕組みをダイナスティアの中に設けているのでそちらにひっぱっていっているつもり。実際、ダイナスティアは外のコミュニティでの存在が少ない。閉じている(商業的には失敗かもしれないが)」


      Q:「どういった点が失敗だったと思うか?」
      A:「現在完全に無料でやっているところ。ボランティアで運営している。すべて口コミにたよって運営している。」


      Q:「もし商業的にするとしたらどのような課金方法をおこなうか?」
      A:「バーチャルな中で現実の商品が手に入る(ECショップに接続される)仕組みで、手数料を稼ぐなど。既に実験的に行っている。またはアイテム課金も可能だと思う」


      Q:「セグメンテーションを細かく切ってサービスをされているように思える。そうするとコミュニティがうまく回るというのもよく分かった。しかし逆に規模を大きくしにくいという面もあるだろう。セグメントを絞らずに安定したコミュニティ運営ができるコツがあるのであれば、教えて欲しい」
      A:「それは、別途ご相談、というところか・・・いくつかのパターンがあるだろうが、やはり大きなセグメントでうまく運営できるような仕組みはぱっとはできないだろう」


      Q:「運営の基本的な状況を教えて欲しい」
      A:「規模は9000人を超え1万人いくところ、2年半を過ぎ今年3年目、開発には手間取って99年から開発、足掛け3、4年かかった。NTTデータをバックボーンに企画し、設計までしたが途中で手を引かれてしまった。その結果ネットワークエンジンを提供されなくなったので、時間がかかってしまった」


      Q:「将来的には商業化を目指していたのか、新しい社会学、行動学の実験の場としたいと考えていたのか?」
      A:「その両方。また無料であるがゆえの実験ができていることもある」


      Q:「一挙に拡大して勝負に出るということはできないのか?このビジネスはネットワーク効果が存在するので一旦大きく出てシェアを取ってしまうことが勝ちパターンだと思う。スポンサーをつけて早めにユーザーを取ってしまうことはできないか?携帯電話会社なんかと組むのもいいのではないかと思う」
      A:「大きなバックボーンに巨額の投資をしてもらえれば、、、と思う。今年くらいからはいけるのではないかなあとは思っている」


      Q:「人が居ない初期のコミュニティに運営側から手を差し伸べていたりしたのか?」
      A:「現在でもゲームマスターの形でゲームの中に入っていって、困っている人を助けてあげる、うまくまとめたりしている。そのために荒れずに世界がうまく言ったんじゃないか思う。そのためにダイナスタッフというキャラクターを立てている。それぞれにファンがいたりする」


      Q:「バーチャルでは貨幣がないが、リアルで商業的に課金することとの齟齬がでることもあるのではないか?そこをうまくするのは難しいのではないか?」
      A:「やはり強さには影響しないアイテムへの課金やECサイトからの手数料以外ではやはり難しいように思う。このようなコマーシャル(CM)モデルなら成り立つのではないかなと思っている。心のサービスについてはなかなか金銭的な対価をもらいづらい」


      Q:「具体的にはどのようにECサイトと提携しているのか?」
      A:「スウィーツやアクセサリーなどの小物の小さなサイトと提携している。今後は音楽や絵などとも考えうるだろう。ただし世界観を大切にしたいので売れないものもある。」


      Q:「同じ仕組みをつかった違うセグメントへのアプローチは?」
      A:「子供向けをやりたい。荒れないコミュニティを作ることができるので、例えば教育の場に進出したいと考えている。また、戦わないので死なないため、顧客として病院の患者などもあるだろうと思う。実際にテストで導入済み」