コンテンツビジネス研究会は、テレビゲームなど娯楽性の高いビジネス産業に関する情報交換の場です。

第4回 2005年11月25日 (金曜日)開催 講演者 : 鷲谷正史氏
東映アニメーション研究所 デジタルアニメーション学科学科長

『制作の進化、製作の進化』

  1. アニメとはなにか?

    • 作画のデジタル化
      ソフト(レタス)の導入
      東映においては、5ラインのうち1つは完全にデジタル化
    • ネットワーク化の構造 フィリピンのスタジオ(完全子会社)と専用線をひいて協業
      当時フィリピンと専用線を引くのと、飛行機で取りに行くのとでは同じ費用だったことがきっかけ
      現在は専用線の費用も安くなり、費用削減に寄与
    • 子会社以外のプロダクションにこのデジタル作画のシステムを導入する際には、メリットを説得するのに苦労があった
  2. 日本アニメはなぜ世界で人気なのか?

    • 手塚治虫と宮崎駿の存在
      • 表現と製作手法の革新、日本アニメならではの手法の確立
        緻密な線で劇的な構図
        人気漫画を原作に
        週単位の新作(ブームの沈静化を防ぐ)
        制作費を億円単位から、千万円単位に落とす・・・など
      • 手塚治虫は東映動画からの独立し、虫プロを設立、鉄腕アトムが大ヒット
      • そのころ東映動画に宮崎駿が入社、テレビアニメにシフト
    • マーケットとロジスティクスの先進性、大きさ
      • 全国へのコンテンツ物流の早期確立(新聞や教科書のために確立されたものを少年誌、映画などに活用)
      • 戦後の表現の自由の獲得と、映画人材などの流入による有力人材の獲得などがアニメにプラスの影響を与えた
    • 豊富な漫画原作の存在
      • 漫画にはいろいろなセグメントに訴求することができる豊富なコンテンツがそろっている
      • アニメだけでなく、実写でも漫画を原作にするものが増えている
      • 漫画は一人で作るので、トライアンドエラーが試しやすく、感性の一貫性も持たせやすい
      • 世界中で日本の漫画を原作にする事例が増えている
    • メディアの変化(需給の一致)
      • ひとつコンテンツをつくると多メディアに活用できる
      • 多チャンネル化の進行もコンテンツビジネスに大きな影響を与える
    • 製作会社の利益構造
      • 制作費
        テレビ放映のためには、制作費が1本500万円、年間億単位の赤字が生じる
        この赤字を、版権ビジネス、海外ビジネスで穴埋め
        製作される本数が増えてはいるが、多くが深夜帯になってきているので、赤字の幅は拡大傾向
      • 版権ビジネス 版権はテレビ局からの収入と同じくらいある
        ビジネスモデルとしては
        ? コンテンツのマルチユースを念頭に入れて、当初の(地上波放映時の)赤字は覚悟で行うモデル
        ? 出し惜しみをして、大勢のひとにあんまり見せないようにして、最終的に地上波に乗せるというモデル
        アニメのキャラクターはタレントなどよりも寿命が長いため、版権ビジネスにおける利用価値が高い
      • 海外ビジネス
        アニメの収入のうち海外からの収入が増加している
        北米とヨーロッパの割合が大きい
        アジアは海賊版などのマイナス要因が悪影響
    • 製作の進化
      • 映画、テレビ、多メディアを経て、第四世代への過渡期にある
      • 牧歌的な形式から、製作委員会方式、過去の作品を担保にした融資や、収益分配請求権を設定した信託や、SPCなど高度化された新方式への移行が生じている
    • 将来にむけて
      • 通説への議論の進化の必要性
        たとえば・・・
        すべて3D化が必要なのではなく、面白い原作が3Dに対応している必要がある
        賃金の上昇をさせると、体力のない会社がつぶれてしまい、高コスト体質になって競争力を失ってしまう
        助成金を増額しても、有効活用されなければ悪い結果をより導いてしまうだけ
      • 日本の未来はこれらについて深めていくことにあると思われる
        成功への過剰適応の解消(2Dアニメでの成功に引きずられないように)
        面白い原作の確保
        ファブレス体制
        人材育成・技術の継承
        新しいメディアへの対応
        資金調達

※質疑応答からの抜粋、要約

御社のネット配信の取り組みの状況はどのようなものか?
東映の有料でのネット配信はいち早く手がけている。東映としては、グループのコンテンツを配信している。アニメのネット配信では、バンダイチャンネルの存在感が大きく、彼らはブロードバンドコンテンツの問屋になりたいということで、いろいろなプロダクションのものを流している
面白い原作の探索をするためには、よいプロデューサーを育てていくべきか、それともハリウッドのストーリーアナリストなどのようにシステマティックに探索するのか?
プロデューサーは育成できないと思う。東映のプロデューサーに言わせれば、プロデューサー育成よりも、アニメ業界自体が儲かるところになって、いろいろなところから有能な人をひきつけるほうがいいと。手塚治虫の革新をもっと推し進めていけばよいと思う。それをインターネットなどがインキュベーション装置として働く形で展開していくようになるとよいのではないか?
製作を海外で行い、原作を漫画に求めるのなら、アニメ会社は何を強みとするのか?またアニメ製作で原作漫画に、どれくらいのアニメ製作会社特有の付加価値をつけられているのか?もしくは、ここに付加価値があるのではなく、いかにうまく原作を獲得するかが競争力の源泉になっているのか?(複数ご質問)
危機的な状況にあるのはご懸念のとおり。企画の源泉である漫画も海外に目をつけられ、製作も海外で行われるので、日本のアニメ会社としての強みが奪われてきている。ただ、視聴者は絵としては、漫画の絵ではなく、アニメの絵しか覚えていない。たとえばその絵のキャラクター化された商品を売ることを考えれば、アニメが元になって、ビジネスとしては回っていく。そのキャラクタライゼーション力が付加価値ではないか?
よい原作があれば、だれが作ってもヒットするのか?どんな原作でもよいプロデューサーが作ればヒットするのか?
これは、どちらかといえば前者ではないかと考える。しかし、同じシナリオで、韓国やフィリピンが作ったものと日本が作ったものを比べたら、目に見えてわかるレベルで差が出て、日本が作ったもののほうが質がよい、というケースは多々ある。OEMで海外のプロダクションが日本のアニメを現在作っているとはいえ、日本のディレクターや監督が抜けるとヒットしなくなったりすることもある。この付加価値を生むための厳密な因果関係に関しては、はっきりとはわからない。名プロデューサーでもはずすこともある