本稿ではイノベーションの在り方を製品アーキテクチャのダイナミズムという視点から論じ、21世紀の我が国が重視すべきは、企業が担うビジネス・モデル側のイノベーションであると主張している。これまでアメリカやヨーロッパ企業が、局所的擦り合わせ型プラットフォーム・モデル、あるいはネットワーク・システムのオープン垂直統合型モデルを完成させたが、我が国企業も設備主導型の産業で、NIES/BRICs諸国の比較優位を巧みに取り込む製造プラットフォームの構築という、新たなビジネス・モデルを生み出した。これらはテクノロジーやプロダクト側のイノベーションをオープン環境で国際競争力へ転換させるための仕掛け作りであり、グローバル市場で先進工業国とNIES/BRICsとの協業を介すことによって構築される。またコモディティー化が進めば進むほど大量普及と高収益の同時実現が可能になる。いずれもトータル・イノベーション・システムの最終ステージに位置取りされており、知的財産やオープン標準化も、ビジネス・モデルという最終ステージに組み込むことによってはじめて有効に機能する。