赤門マネジメント・レビュー
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論文
我が国エレクトロニクス産業にみるモジュラー化の進化メカニズム
マイコンとファームウエアがもたらす経営環境の歴史的転換
小川 紘一
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2008 年 7 巻 2 号 p. 83-128

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抄録

製品の深層で進むモジュラー化のメカニズムを、マイコンとファームウエアがもたらす基本的な作用から明らかにした。我が国の製造業で特にエレクトロニクス産業が1995年から長期低迷を続けたが、その背景に製品アーキテクチャのモジュラー化現象があった。これを光ディスク技術の内部構造に立ち入って解明する。これまで摺り合せ型に位置取りされた材料・部品でさえ、マイコンとファームウエアの間接的な介在が急速に進んでおり、擦り合せ型なら安定的に強いという単純な構図の通用しない経営環境が、深く静かに我が国企業へ迫っている。我々の目に触れることない深層部で、製品機能・性能・品質やコスト、さらには競争優位の位置取りまでをも左右するという意味で、マイコンとファームウエアは21世紀の人工ゲノムに位置取りされるのではないか。人工ゲノムが作り出すモジュラー化はオープン・イノベーションの潮流を加速させる。今後は、我が国企業の利益や市場支配力を支える“ブラック・ボックス化、摺り合せ型、統合化”の役割を、マクロ政策としてのオープン・イノベーションと連携させる体系構築が必要である。

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