2007 年 6 巻 11 号 p. 543-576
液晶テレビの市場では、中国企業が参入して急速に成長している。本稿ではまず、技術蓄積の少ない中国企業の急成長を可能にした原因を、液晶テレビのアーキテクチャと分業構造から明らかにする。液晶テレビは、半導体技術の進歩がドライバーになって、典型的なモジュラー型製品になった。モジュラー化は新規参入を容易にするとともに、参入過多と価格競争の激化をもたらす。こうした市場特性に起因して、中国企業は収益性悪化と新たな製品領域への新規参入を繰り返す「モジュラー型製品の収益悪化サイクル」に陥りやすい。モジュラー化を活用しながらも、このサイクルからの脱却を目指す中国企業のありようについて考察していく。