2006 年 5 巻 7 号 p. 461-482
本稿は、各社へのインタビューとアンケートを通じて直接収集したデータに基づいて、1980年代後半の日米欧主要自動車メーカーの製品開発プロセスおよび開発組織の実態を明らかにする。本章(1章)では基礎概念となる情報処理システムとしての製品開発プロセスを概観し、日米欧の自動車メーカーを対象とした調査に基づき、製品開発における情報処理を円滑化させる組織構造、および製品開発プロジェクトにおける部門間の調整機能を担うプロダクト・マネジャーの役割を明らかにする。製品開発は技術の商品化、および製品の量産化に必要とされる情報資産を創出するプロセスであり、ほとんどの自動車メーカーが製品開発において部門間統合メカニズムを活用し、情報処理の促進を図っていた。しかしプロダクト・マネジャーの機能は、特定の開発段階に限定されるケースとプロジェクト全体に及ぶケースが混在し、開発の効率性を左右する要因と考えられる。