国際経営論では本国で培った能力の活用が企業の海外展開の主要因だと考えてきたが、同国出身の多国籍企業が同じ現地進出先で異なる行動パターンを採る可能性については検討が十分ではなかった。本稿は、多国籍企業が海外拠点で遭遇するローカル危機(現地における環境変化)への対応に焦点を絞り、出身国が同じである二つの多国籍企業の同じ現地国でのローカル危機対応のありかたが、両社の財務的資源や組織能力の違いによって異なりうることを示す。簡単な分析枠組を示した上で、事例研究として、タイにおけるトヨタ自動車と三菱自動車工業のローカル危機対応を比較分析する。