赤門マネジメント・レビュー
Online ISSN : 1347-4448
Print ISSN : 1348-5504
ISSN-L : 1347-4448
査読つき研究ノート
日系企業の新興国市場における事業革新
エプソン「インクタンク」の導入過程
松井 義司
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 16 巻 6 号 p. 243-260

詳細
抄録

2000 年前半からインクジェットプリンター (IJP) の互換インク普及の問題が新興国で深刻化した。エプソンは新興国で既存の事業モデルが立ち行かなくなったが、インクタンクという新たな事業モデルを業界の中でいち早く2010年に導入した。本研究の目的は、エプソンの新興国市場におけるIJPの事業革新過程の特徴を解明する点にある。その特徴として、既存の事業モデルへの危機感、経営トップの関心、事業部と現地の協業など、事業革新の既存研究で頻繁に登場する点が挙げられる。しかし本事例の最大の特徴は、経営トップ、事業部と現地の協業、あるいは現地販社が、さまざまな出来事や探索結果について解釈し続けた点にある。日系グローバル企業が新興国発イノベーションを進める上での「変化する環境を解釈する組織的な能力」を問う事例である。

著者関連情報
© 2017 特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
前の記事 次の記事
feedback
Top