赤門マネジメント・レビュー
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査読つき研究ノート
海外グループ企業における初期流動管理の導入事例
海外での日本的生産マネジメントの展開
高梨 千賀子
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2016 年 15 巻 6 号 p. 309-330

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抄録

本稿は、アジア新興国で日本企業がマイナー出資をしている海外グループ企業 (自動車部品生産) において、初期流動管理という日本的生産マネジメントを導入する事例を取り上げる。「初期流動管理」は新製品の設計から量産までのプロセスでQCDを徹底的に検証するための管理であり、日本企業の競争力の源泉と見做されている。新製品立ち上げに際して必要となる同管理は、日本企業では柔軟に行うことができるが、海外拠点の既存組織においては、その実現が難しい。本稿では、初期流動管理を実施するために海外企業が直面した課題を明らかにし、さらに、ARC分析を用いて初期流動管理導入前後の組織を比較分析することで、課題解決法としての組織設計の在り方を検討した。その結果、マイナー出資の海外拠点で初期流動管理を有効に実施していくためには、1) 初期流動管理を組織構造上に明確に位置づけること、2) 意思決定に必要な情報の流れを構築すること、3) 初期流動管理業務を評価と報酬に反映させること、4) 複数の機能部署間にまたがる業務をコンカレントに全体最適できる経営者層のアーキテクト型リーダーシップ、の重要性が明らかになった。

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