本稿は新興国企業の日本的生産システムへの認識が、新興国企業の能力構築にどのような影響を与えるかを明らかにした研究である。現代自動車は、日本的生産システムを能力構築の「全面的な目標」と認識してその全面的な導入を目指すも、それを完全には達成できなかった。しかし目標を達成できなかったことが、彼ら独自の生産システムの構築を国内外で促していた。ここから、(1) 日本的生産システムが「全面的な目標」として認識されることが、新興国企業の国内外の能力構築を促すという日本的生産システムの新たな波及効果と、(2) 先進国企業の技術・知識・マネジメントが新興国企業の海外進出をサポートする役割を持つことを議論した。