2012 年 11 巻 6 号 p. 349-376
本稿は日本のアニメ産業を事例に、芸術的な感性を問われる製品制作(開発)における情報技術導入の意義を分析する。まず、開発における工程ごとに詳細に検討することによって、「彩色」「撮影」では業界全体で情報技術が普及しているが、「作画」では一部に3DCG が組み込まれているがデジタル作画はあまり行われていないことを明らかにする。さらにこうした工程ごとの細かい分析により、情報技術の登場初期には情報技術投資と生産性の間には関係性が見られないという生産性のパラドックスが生じる理由、並びにそのことで、手描きと3DCG のハイブリッドが生まれたメカニズムも明らかになる。