2005 年 4 巻 8 号 p. 417-430
コンテンツを保持する音楽・映画業界は、違法コピーによって著作権が脅かされることを恐れ、ネット上の流通に消極的である。しかし、コピーが売上へどれほど影響を与えるかは明らかではない。違法コピーが禁じられたとして、そのユーザがオリジナルを買うとは限らないからである。本稿ではファイル交換ソフトWinnyをとりあげ、これによる音楽CDのファイル交換がオリジナルCDの売上を減少させているかどうかを調査した。結果、WinnyがCD売上を減少させている証拠は乏しく、仮に減少させているとしてもきわめて僅かであることが示された。著作権保護の最適水準の立場からは、現状の著作権保護水準は過剰であり、少し弱めた方が社会的厚生は高まる。またビジネスの立場からは、少々の違法コピーは恐れずにネット配信に乗り出すべきである。