2011 年 10 巻 8 号 p. 557-584
T型フォードのようによく売れてくれれば、たとえ発明品ではなくても、その製品デザインをドミナント・デザインと呼んだり、あるいは規格の一部をデファクト・スタンダードだと指摘したりすることは、さほど難しいことではない。それが「殻」として機能したということも、なにやら当たり前すぎるほどである。しかし、何かが「殻」であることの必要条件は、実は、「売れる」ことではない。ドミナント・デザインであることも、デファクト・スタンダードであることも、発明であることも必要条件ではない。そんな条件を満たしていなくても、「殻」として機能した例があるからである。それが世界初の汎用デジタル電子計算機ENIACである。