テレビゲーム産業 資料リスト

作成:東京大学大学院 生稲 史彦
1999年5月30日

(1)経営学の文献

* 小橋麗香(1993a)「間接制御型ネットワークと不確実性」 『六甲台論集 vol.41 No.2』
* 小橋麗香 (1993b) 「家庭用テレビゲームソフト産業の戦略と組織」『Business Insight 1993 Autumn』
* Kohashi Reika and Kagono Tadao (1995)“The exchange and development of images:A study of the Japanese video game industry”
* 小橋麗香(1998)「ソフトのイノベーション <任天堂のデファクト・スタンダード形成とソフト開発>」『ケースブック 日本企業の経営行動 第3巻』所収

…経営学において逸早く家庭用ゲーム機産業の研究を始めた小橋女史による研究です。一貫した問題意識は、我々の研究とほぼ同じものであり、それを日本的経営との関連、任天堂の能力で説明しようという立場を取っています。具体的なテーマとしては、(1993a)が任天堂とソフトメーカーの間の関係について、(1993b)がソフトメーカー市場の変化とソフトメーカーの戦略の相互関係について述べています。それらを受けて、(1995)で包括的な議論を展開し、日本において家庭用ゲーム機産業が成功した要因を、産業レベル、企業間関係、企業レベルで分析しています。(1998)は、入手したばかりなので詳しいことは不明ですが、(1995)の内容を、任天堂を軸に述べたものであるといえると思われます。なお、(1998)のリファレンスは比較的充実しています。


* 長谷川雅史『家庭用テレビゲーム −NINTENDO64は売れるのか?−』 学習院大学新宅ゼミ卒業論文 1997年

…学習院新宅ゼミの学生さんの論文です。テーマに、ハードの拡販とソフトウェア市場の状況のと関係(「ハードとソフトの好(悪)循環」)を取り上げている点が新しいといえます。


* 砂川和範 (1998) 「日本ゲーム産業に見られる企業者活動の継起と技術戦略 〜セガとナムコに見られるソフトウェア開発組織の形成」『経営史学 第32巻第4号』

…東大砂川氏の論文です。セガとナムコの事例から家庭用ゲーム機産業の企業がソフトウェア開発の能力を形成する過程を歴史的に描写しています。砂川氏は、セガに独自のルートを持っているため、セガのソフトウェア開発についての記述が厚いものになっています。

家庭用ゲーム機産業というテーマは、我々の世代からは馴染みがあるものであり、競争もダイナミックに行われているため、論文で取り上げようとする人は他にもいるかと思われます。以下の2本の学位論文は、筆者は入手していませんが、小橋(1998)の本で名前が出ていたものです。
* 福島英史 (?) 『市場創造の戦略論 −家庭用ビデオゲーム市場の生成期における戦略』 一橋大学大学院商学研究所修士論文
* 小橋麗香 (?) 『日本の家庭用テレビゲーム産業 −その構造と組織過程』神戸大学大学院経営学研究科博士論文

(2) 経営学以外の文献(家庭用ゲーム機産業全般、ハード)

* 市川公士 (1993) 『コンピューターゲーム』 日本経済新聞社
* 山名一郎 (1994) 『キング・オブ・ゲームの未来戦』 日本実業出版社
* 高柳尚(1996) 『ゲーム戦線超異常 〜任天堂vsソニー〜』 ライフ社
* 武田亨 (1996) 『売られた喧嘩、買ってます 〜任天堂勝利への青写真〜』
* 相田洋 大墻敦 (1997) 『ビデオゲーム巨富の攻防・新電子立国4』 NHK出版

…いわゆる「業界本」です。業界の内外の人がその時々で書いており、他にも多数存在します。傾向として、1994、5年ぐらいまでは、任天堂のビジネス・モデルを中心に家庭用ゲーム産業の歴史、ハードウェアについての説明等を加えたものが中心で、それ以降は、SCEのビジネス・モデルの新しさ、優位性を主張したものが多いようです。筆者の読んだ上記の本は、「業界裏話」の少ない、素直な本が多いと思われます。ちなみに、相田・大垣(1997)はビデオあります。

* 平林久和(1997) 『ゲーム業界就職本』 アスペクト
* 平林久和・赤尾晃一 (1996) 『ゲームの大学』 メディアファクトリー

…産業内の最大の論客(と思われる)平林氏の著作です。内部の人ならではの、人脈、知識を生かしているといえるのではないでしょうか。『就職本』の方は、産業の歴史、ゲームソフト開発の仕事内容、ソフトメーカーのリストがあり、毎年出されています。『大学』は、産業の歴史、構造を網羅的に取り上げた本であり、提出された意見は全面的に賛成とはいかないものの、良く考えられていると思います。

* 矢田真理 (1995) 「(すいません題不明です)」 『総研調査95.5』
* 矢田真理(1996) 「求められるビジネス・システムの転換 〜競争時代のテレビゲーム産業」『総研展望 1996.10 (No.75)』
* 矢田真理 (1996) 『ゲーム立国の未来像』 ,日経BP.

…産業外の最大の論客(と思われる)矢田女史の著作です。シンクタンクの人の著作らしく各時点での状況の把握(記述、資料)に優れています。矢田(1995)はアメリカの状況について詳しい数少ない文献の一つです。

* D.シェフ (篠原慎訳) (1993) 『ゲーム・オーバー』 角川書店
* 鈴木貞彦 (1992) 『株式会社 セガ・エンタープライゼス』 慶応義塾大学ビジネス・スクール(ケース)
* 大下英治(1993) 『セガ・ゲームの王国 』 講談社

* 野中郁次郎、小池優、福島英史(1995) 『セガ・エンタープライゼス 〜ソフト市場創造〜』社会経済生産性本部 経営アカデミー(ケース)
…以上は、ハードメーカー一社に絞った著作です。任天堂については、他にも数多くありますが、セガについては、比較的少ないと言えます。『ゲーム・オーバー』は、優秀といわれているニンテンドウ・オブ・アメリカについての記述が豊富なことが特徴です。セガについての文献は、ケースの方が正確性を、大下の文献が雰囲気とイメージを与えてくれると思われます。

(3)経営学以外の文献(ソフト、その他)

* 田中パンチ(1994) 『ゲームのム』 新紀元社
* 別冊宝島329号 (1997) 『ゲーム完全攻略本』宝島社
* (任)電子計算機応用遊興柔物研究会(1997) 『クソゲー白書』 夏目書房

…ゲームソフトに関する文献です。ゲームソフトに関しては、ハードウェア及びハードメーカーに比較して、(まじめな)文献が少ないように思われます。上記の2冊は筆者の持っているものですが、田中はソフトウェア開発がどのようなものかについてイメージを得るために読みました。別冊宝島の方は、ソフトウェアに関する様々な話題が提供されています。(同様の役割を果たす雑誌として、『ゲーム批評』があります。)『クソゲー白書』は、文字どおり、「クソゲー(非常につまらないゲーム)」に関する調査をまとめたものですが、消費者がどのような視点でゲームソフトを評価しているのかということを知る上で参考になるのではないか、と思われます。なお、ソフトウェアに関する出版物は、他の文献と異なり、書店のゲーム関連コーナー、ゲーム販売店の書籍コーナーの方が充実していると思われます。

(4)資料

* 電通総研『情報メディア白書』 1995年版
* 日本産業新聞社『市場占有率(各年版)』 日本経済新聞社
* 東京玩具人形問屋協同組合『月刊トイジャーナル 1996年7月号』
* 日経BP社 (1995) 『次世代ゲームビジネス』 日経BP社

…資料です。コンピューター・ゲーム、家庭用ゲーム機産業とも統計面での把握が十分ではありません。現在までのところ、上記のよう資料で補ってきました。最後の日経BPの本は、当時のゲーム産業の状況を手広くまとめた本ですが、筆者は所有しておりません。

以上、筆者が所有もしくは目にしたことがある文献を紹介させて頂きました。この他に筆者が所有しているのは、日経新聞のスクラップ(1994〜)、日本工業新聞のナムコ紹介シリーズなどです。

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